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Yes We Dance!プロジェクト in パリ(学術セミナー/デモンストレーション編)


みんなのダンスフィールドは、9月5-8日にかけてフランス・ヴェルサイユで行われた「Yes We Dance!プロジェクト」のパラリンピック関連のイベントに参加しました。


本プロジェクトは、東北大学大学院工学研究科の平田泰久教授がパリ・サクレー大学(フランス)のEric Monacelli教授と連携し発足しました。AIロボット技術を用いて、世代の差や障害の有無・程度を気にすることなく、国境を越えて全員が同じステージで一緒にダンスを楽しむことができる「スマーター・インクルーシブ・ダンス」のプロジェクトです。


*詳細は以下のブログをご覧ください。


昨年東京・八重洲で行ったイベントに続き、今回は各国のメンバーがパラリンピックの開催にあわせてヴェルサイユに集結しました!


最初の2日間はパリ・サクレー大学にてプロジェクトに関する学術セミナー、3日目にパリ2024パラリンピックの公式ファンゾーン(パブリックビューイング会場で、市民の方が無料で観戦やイベントを楽しめるオープンスペース)であるLe Club 2024 de Versailles(ヴェルサイユ)にてAIロボットの試乗体験(デモンストレーション)を行いました。

今回はこちらの様子をレポートします!


▼Day1

初日は参加メンバーの自己紹介からスタート。

日本、フランス、カナダ、南アフリカから研究者、学生、ダンサー、アーティストなど多様な背景を持つメンバーが集いました。


続いてAIロボットのプロジェクト、取り組みについて各国のプレゼンテーションが行われました。パリ・サクレー大学のEric先生、東北大学の平田先生が開発を目指すロボットが、それぞれ可動性の拡張だけではなく使用者の感性を広げることまでを目指していること、決まった形状を取らず、使用者のニーズに応じてかたちを変化するロボットとしてのコンセプトが共通しており、共同研究に至ったとのこと。


他国のプレゼンでは、Eric先生開発のAIロボット'Volting'を中心に各国で行ったプロジェクトの発表が行われました。各国ともプロジェクトがどのように各機関と連携し動いているかについてお話されており、リハビリ、福祉施設や芸術団体など多様な機関と連携しているようでした。

(プレゼンを行う東北大学 平田泰久教授)


プレゼン終了後は小グループに分かれてプロジェクトに関する課題は何が挙げられるかについて討議を行いました。

私たちのグループではロボットに乗った方と他の参加者との関係性、双方が互いにコントロールされることなく、どのように表現しあえるか等について討議を行いました。

その他の課題として、ロボットの安全性やアクセシビリティ、プロジェクトの評価方法等が挙げられていました。


▼Day2

Day1のディスカッションで挙げられたChallenges(課題)を基にSolution(解決策)とAction Plan(行動計画)について討議、発表を行いました。

私が参加したグループでは、ロボットのプロジェクト評価をどのように行うかについて討議しました。例えばモーションキャプチャで動きを精査する、被験者と対話を行う、標準化できる基準を決める、使用者の方が外出した回数の変化を見るなど、成果を実数として見える化するものが多く取り上げられ、感性的な部分の評価をどのように行うかはいずれの国も課題に感じているようでした。


セミナーでの他国のプレゼンは、言葉での説明が多く画像や動画が少なかった印象があり、英語(第二言語)で話し、聞いていることもあって、内容を掴むのが難しく感じました。

また多様なメンバーが参加してはいましたが、工学系の参加者が多く、ディスカッションでは工学寄りのトピックが多く挙げられているように感じました。

ディスカッションに慣れている参加者多く、討議がスピーディ行われる中で、アート側の参加者として意見を思うように伝えられず、もどかしく感じる場面もありました。

国籍等を超えて、多様な参加者がいる環境での情報の伝え方の大切さを感じると共に、英語がスタンダードで進んでいく国際的な現場の中で、自身の力不足を痛感しました。

またアート側の参加者の発信や交流の機会が少なく、私たちの活動について共有する機会や他国のパフォーマーとの交流、パフォーマンス制作等についてお話できる機会があれば、なお良かったと思いました


短期間でプロジェクトの課題、解決策から今後の行動計画まで討議し、かつ英語でのディスカッションでハードでしたが、濃密な時間でした。勿論これらの討議で画期的な解決案等が生まれたわけではなく、検討は道半ばです。ダンスや表現の新たな可能性を感じるとともにアクセシビリティや安全性、環境整備や評価など、向き合うべき課題がまだ沢山あることを実感し、また各国で共通している課題も多いようでした。


▼Day3

ファンゾーンにてAIロボットの試乗体験を行いました!

フランスチームから'Volting'、日本チームから'Whill'、'Moby'と3種のロボットが参加しました。最初は見慣れないロボット、人たちに恐る恐るだった子どもたちですが、ダンスフィールドメンバーを中心に試乗を促し、兄弟やお友だちが乗り始めると興味津々。私も僕も乗りたい!と沢山の子どもたちが試乗してくれました。また、同日会場では他のパラリンピック関係のイベントも行っており、障害を持つ方も多数参加くださいました。


参加者の方は、私たちがロボットでの身体の動かし方をジェスチャーで示したり、一緒に動いたりするとき方を感覚的に掴めているようでした。特に子どもたちは怖さをあまり感じていないようで、一度乗り方が分かると軽やかに乗りこなしており、夢中になって目をキラキラさせながら、2回、3回と試乗する子もいました。

短時間ではありましたが、実際にロボットに乗って体験してみることで、身体とロボットがセンサーによって連動し、一体化するように動くという新しい身体感覚を経験することができたようでした。

同時に時間やスペース、言語等、様々な制約もあり、ロボットに乗って表現する、他者と一緒に表現するというところまで共有するのはハードルが高かったように感じました

今後今回のような限られた状況下でも、試乗や体験の範疇に留まらず、更に一歩踏み込んだ交流や表現ができることを目指していきたいと思います。


試乗体験は、最後ロボットバッテリーが切れてしまうまで続きました。

各国から様々な方が参加していますが、ロボットの参加は日本とフランスチームのみです。自国の研究や私たちの活動を海外で発表することができ、また参加者の方が楽しんでいる姿を見ることができたのはとても嬉しく思いました


今回のプログラムの中で、試乗体験は市民の方との唯一の交流機会でした。

初めて見るものへの好奇心やワクワク感は世界共通だと思った反面、子どもたちが物怖じせずスッと体験/表現の空間に入ってくる場面もあり、文化の違いを感じた点もありました。

公共の場で誰もが気軽に参加することができ、子どもたちが遊びの延長線上でテクノロジーに触れられる素晴らしい機会でしたがプロジェクト/ロボットの内容や表現活動についてもっと参加者の方に伝えられたら、より機会を活かすことができたと思いました。

今後の継続的な活動に繋げるためにも、広報素材(チラシ/動画等)の配布/掲出や短時間でも表現活動行い交流を深める等、研究や活動内容をしっかりと伝えていくことも大切だと感じました。


(9/8パフォーマンス終了後の様子)


渡航前の情報が少なく、どのようなメンバーが参加するか、イベントやスケジュールの詳細が事前に分からないことも多かったのですが、その分とても柔軟、海外の現場らしくその場で物事が決まることも多かったです。帰国後の今では、あのとき言ってみたらorやってみたら良かったと思うことが多く、何事も受け身でなく主張(アピール)していかないといけないと感じました。またいつでもチャンスが来れば、掴めるよう準備しておくことも大切だと実感しました。


国や研究分野、所属に関わらず、多様な人々が連携してより良いものを目指しているのが、とても美しく、心強く感じました。このようなテクノロジーや新しい表現が日常に浸透して、人々がより暮らしやすく生き生きと表現できる社会になりますように。

今後も研究を深められるよう、また私たちの活動国内外に発信していけるよう、頑張ってまいりたいと思います!

文:水村 麻理恵 撮影:みんなのダンスフィールド/東北大学/パリ・サクレー大学

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